舟橋村地方創生
舟橋村/富山大学

舟橋村が目指す地方創生  Landing goal

舟橋村の現状

舟橋村の現状
〈消滅可能性が潜在する舟橋村〉〜実は出生率がそれほど高くない〜
本村は平成元年から着手した住宅施策による人口増施策が功を奏し,地価の安さや交通の利便性の高さ,コンパクトなまちづくりを背景とした県都富山市のベッドタウンとして人口倍増の3,000人を突破し,平均年齢も約40歳と若返り,国立社会保障・人口問題研究所によれば今後も本村人口は増加すると推計される,全国的にも希少な自治体と位置づけられています。 しかしこの人口推計の合計特殊出生率は0〜4歳の転入人口を含んだ数値であり,実は合計特殊出生率は1.44と近隣市町と変わらない水準なのです。
〈子育て世代アンケート調査〉〜コミュニティを求める子育て世代〜
平成25年度,小学生未満の保護者を対象とした子育て環境に関するアンケート調査とともに,未就学児童の保護者を対象としたヒアリング調査を実施しました。その結果,病児・病後児保育等の施設サービスに対する要望に加え,子育て世代の情報交流の場である公園の利用者が少なく,もっと保護者同士・子ども同士の交流(=コミュニティ)が出来る機会がほしいとの声が多数見られました。また,昔のおもちゃづくりや地域の料理,そして地域の見守りといった地域住民を巻き込んだ子育て環境の充実やICTを活用した情報発信に関する要望も多く見られました。
〈居場所を求める中高年団地世代〉〜コミュニティが必要な世代〜
平成元年以降の宅地開発により,村内各地には新興住宅団地が誕生しましたが,この地域に暮らす住民には核家族が多く,まもなく退職期を迎えます。平成26年度には,当該団地に住む60歳前後のすべての住民(男女)を対象に退職後の生活についてのヒアリング調査を実施したところ,退職者の多くが「楽しみにしていた退職後の生活だが,地域に仲間もおらず,何かしたいのにすることが見つからない」との答えでした。会社にあった居場所や役割を,退職後の地域に求める中高年団地世代を対象にした地域参入のきっかけづくりが必要です。
〈コミュニティと出生率は関係あり〉〜出生率が高い先駆自治体から学ぶ〜 
出生率の高い自治体をみると,地域活動への参加の義務づけや地域住民相互の“結い”“もやい”の精神で子育て支援を行う共助機能を形成することで出生率の向上を実現させていることがわかりました。子育て世代の転入促進と出生率向上のためには,どの自治体も競って取り組んでいる医療費や保育料の無料化などの子育て支援サービスの充実のみならず,「地域ぐるみ(住民協力)で子育て支援を行う共助体制の強化」が重要なのだと私たちは仮説を立てています。
〈民間による子育て共助の商品化〉〜立役者は民間の発想〜 まちづくりの背景
首都圏企業をみると,子育てに最も重要な機能はコミュニティによる支え合いであると分析し,入居者相互の支え合いやICT活用,緑地活用による子育て共助の地域づくりに取り組む住宅を商品化する動きが進んでいます。「コミュニティ」が付加価値を持つことを首都圏企業は気づいているのです。
〈地方の壁〉〜企画力,資金力,コミュニティ形成力〜 まちづくりの課題
一方,県内企業に目を向けると,首都圏企業のような「コミュニティ」が付加価値を持つことへの気づきは薄く,子育て世代が求める子育て共助機能(住宅,ICT・緑地活用)の商品企画力の不足など,首都圏企業と富山県内企業の格差があります。一方,本村の地方創生を進めるためには,本村の子育て世代の転入者数だけを考えていてはいけません。富山県全体として仕事をつくり,首都圏への転出抑制と転入増加を図らなければなりません。そのために,村を社会実験の場として活用して,ローカル企業の仕事創出を進めていこうとしています。

地方創生の目標

本村の地方創生は次の3つの目標を掲げています。
①子育て世代の転入が増加する(5年間で40世帯の転入)
②“舟橋村でならもう1人産みたい”と実感できるコミュニティや支援サービス等が充実する
  (年間30人の出生数)
③ローカル企業が地域の困り事にビジネスベースで取り組み,新たな仕事が生まれる
  (第二創業等の支援)
舟橋村が目指す地方創生のイメージ
  • 入居する子育て世代が相互に支え合うコミュニティを醸成する「子育てコミュニティ賃貸住宅」(例:旭化成ホームズ(株)子育て共感賃貸住宅「母力」)を整備して子育て世代転入の戦略的な受け皿とする
  • 「子育てコミュニティ賃貸住宅」周辺に,子育て世代や中高年団地世代等が集まる公園・保育園を配置したコアエリアを形成(このエリアを「子育て共助のまちづくりモデルエリア」と位置づける)し,“コミュニティによる支え合い”を戦略的に生み出していく
  • 県内造園業者のコーディネートによる子育て世代や中高年団地世代等が繋がる「公園の使いこなし」イベント等を開催して,コミュニティ醸成とローカル企業の仕事づくりを目指す
  • 保育園における中高年団地世代と園児・父兄との出会いイベント等を開催して,“コミュニティによる支え合い”への中高年団地層の参加を促す
  • 村内全域をカバーするコミュニティ形成に寄与するICTサービスを提供(スマホアプリ,ケーブルテレビ活用等)し,“コミュニティによる支え合い”をサポートするとともに,村外にもアピールすることで“子育てしやすい舟橋村”ブランドを浸透させる
  • 子育て世代等の意識・行動ビックデータを収集活用して,村独自のコミュニティ形成につながるICTサービスの開発を行う一方,ビックデータ分析を活用し多分野での新たなCSVビジネスを創出する
  • 「子育てコミュニティ賃貸住宅」入居世帯の村内への住み替えを戦略的に実現するインセンティブ制度を創設(金融支援,住宅斡旋等)し,最初は賃貸住宅で転入してもらい,その後は戸建住宅で定住してもらう好循環サイクルを形成する
  • 賃貸住宅,公園,保育園等の戦略的なマネジメントチームの編成(地域住民による「子育て支援サポーター・リーダー」,ローカル企業による「共助コーディネーター」)して,“コミュニティによる支え合い”の一翼を担ってもらう