舟橋村地方創生
舟橋村/富山大学

平成30年度 富山県緑化造園土木協会総会

<記念講演会>地方創生にコミットする造園業とは
〜舟橋村のケーススタディを踏まえ人口減少時代に求められる新たな役割〜

日 時: 平成30年5月25日(金)16:15〜17:45
会 場: パレブラン高志会館 嘉月の間
主 催: 一般社団法人富山県緑化造園土木協会
  一般社団法人日本造園建設業協会 富山県支部
講 師: 富山大学地域連携推進機構教授 金岡省吾
  舟橋村生活環境課長 吉田昭博
  舟橋村生活環境課 廣瀬美歩
  株式会社日本能率協会総合研究所 塩見一三男
平成30年度 富山県緑化造園土木協会総会 記念公演

一般社団法人富山県緑化造園土木協会の平成30年度通常総会において「地方創生にコミットする造園業とは」と題した記念講演会が開催された。講師は,富山大学地域連携推進機構の金岡教授を中心として、舟橋村の地方創生に関わるメンバーであり、舟橋村地方創生プロジェクトをケーススタディとして取り上げながら,人口減少時代に求められる造園業の新たな役割についての講演が行われた。

また講演会はPBL(Project Based Learning)方式(課題解決型学習)という授業形式の要素が取り入れられたもので,参加した造園業者等には「クリッカー」という端末機器が配られ、その機器を用いて講義内容に対する感想などが画面に表示されるという、講師側と会場側との情報交換が行われるスタイルであった。

記念講演

はじめに 富山大学地域連携推進機構教授 金岡省吾
  • 日本公園緑地協会が舟橋村の地方創生の取組を紹介してから全国的に舟橋村の動きは注目され,興味をもたれはじめている。
  • 地方創生にコミットする造園業とは,地方創生の目標(人口減少、子育て支援、地方のしごとづくり等)に対して造園の仕事を通じて貢献していくことである。
  • 舟橋村の地方創生の特徴は「県外の先端企業が関心を持っていること」
  • 「KPI(key performance indicator )を定め,人口減少にコミットしていること」の2つである。
  • 県外の先端企業としては,積水ハウス,旭化成ホームズ,AzMama,デロイトトーマツ,NTTグループなどが関わっている。また財務省,公園緑地に資する関係団体も注目している。
  • 舟橋村は「子育て世帯の転入」「出生率の向上」「県内企業のしごとづくり」というKPIを設定し,そのためのモデルエリアで「こども園」「賃貸住居」「公園」「IT」が新しい仕事をつくり,目標達成を各事業者がコミットしている。
  • PDCA(plan-do-check-act)を繰り返しおこない事業を進めている。
舟橋村の地方創生について
舟橋村生活環境課長 吉田昭博
  • 舟橋村の地方創生のためには,子育て環境を良くすること、県内の魅力ある仕事を作ることが課題であると考えている。
  • 村では平成24年から富山大学の協力を得て,本質的に子育てし易い環境について調査研究し,官民の先駆的事例などを検証してきた。
  • 「子育て共助は出生率や転入促進に関連する」という調査結果を得て,平成27年の総合戦略で子育てコミュニティを醸成することを目標とした。
  • 仕事においては,公共工事が減少していく中で,舟橋村としてできることは、村がフィールド提供してその中に新しい仕事をつくってもらうことである。
  • そのために、子育てコミュニティづくりを重視した賃貸住宅,子育てコミュニティを高める都市公園の指定管理のあり方,地域に求められるこども園といったものをモデルエリアにおいて進めている。
  • ただし、フィールド提供だけでは地方と首都圏との差もあり,仕事づくりが難しいことが判り,村も伴走しながらの協働へと姿勢を改め,2年間にわたり勉強会やサウンディング調査を行ってきた。
  • 勉強会の成果もあり首都圏との差が縮まってきたし、そのノウハウを県内他地域でも展開したいという業社が育ってきた。
舟橋村の都市公園や造園業者について
舟橋村生活環境課 廣瀬美歩
  • 舟橋村の地方創生は公園が重要な役割を担っている。子育て世代の転入促進と出生率の向上,仕事づくりを公園の目標にしている。
  • 村のパークマネジメントの特徴は、造園業者がコーディネートしていること,②公園の使いこなしを意識したイベントやそれを通じてコミュニティの醸成を目指していること,そして造園業がそれらの取組みによって自走自立を目指していることである。
  • 景観の美しい公園が利用している人にとって良い公園とは必ずしも限らない。特に舟橋村の公園をみているとそう思う。
  • 造園から公園の新しい使い方を提案して欲しい。そういう提案してくれる造園業者さんと仕事をしていきたい。行政も意識変化が必要であると思っている。
  • 村では平成27年度にどんな公園を必要としているのかを村民からヒアリングし,平成28年度上半期には様々なイベント開催(集客に課題),下半期には子育て支援センターと共催でイベント開催(人も集まり参加者から好評だったが,平時の公園利用に繋がらなかった)してきたが、手探りであった。
  • その反省も踏まえて平成29年度は,イベント等を通じて人が繋がることを意識して、「子ども公園部長」「クラウドファンディング」を企画し、公園に関わる人を巻き込む方向にシフトさせて、成果をあげた。
  • 今年度は,愛着と期待をキーワードにした「月イチ園むすび」と題したイベントに取り組んでいる。
  • この公園があるから舟橋村に住みたいと思ってもらえるように今後も取り組んでいきたい。
造園業を取り巻く環境について
株式会社日本能率協会総合研究所 塩見一三男
  • 都市公園等の面積,箇所数の推移は近年、横ばいであり、都市公園予算は平成7年をピークに減少を続けている。造園工事業の完成工事高も減り続けている。公園施設の老朽化も進み維持管理費の単価が一時期と比べると半額の水準である。
  • 行政の仕事の出し方も変わりつつある。本来の指定管理者制度においては仕様書づくりを民間が担うことが期待されている。パークマネジメントプランをつくり、使われない公園のあり方が問われるようになっている。サウンディング型市 場調査の動きも年々増えてきている。
  • このような中、小規模公園の使い方を模索する大手小売業者や、公園の使い倒すことに特化した事業者が出始めており、造園業者のスタンスが今後一層問われるようになる。

舟橋村の造園勉強会参加者の感想

昨年参加した若手県内造園業者2名から感想と意見発表された。

T氏

イノベーション塾へは自社のことだけを考え,この仕事の社会的必要性を感じたいと参加した。 楽しく仕事するために学んだことを活かし,身近な公園を使っている人が楽しめるよう剪定や管理をしていきたいと思った。勉強させていただいた中で自分の出来る事,出来ないことが見えるようになり未来への明るい光が見えてきた。

K氏

コミュニティがビジネスに繋がるかが自分の中でも課題となっている。公園を使ってもらい,そのコミュニティで人と人とを繋げていくことが最大の課題として取り組んでいる。

造園業界は人手不足が大きな課題である。それが原因で事業拡大ができないのも悩みである。そこで,一般の子育てママをパートとして雇用して、公園でのコミュニティづくりに取り組んでもらっている。そこからさらに新たな人の繋がりをつくり、コミュニティを広げていくことに挑戦している。

子ども公園部長の取組も子供と父兄の公園利用という面だけでなく,子供たちに若い頃から造園の仕事を知ってもらい興味を深めて欲しいという思いで取り組んでいる。
新しいビジネス展開を拡げることは難しいが,横展開を考えながら富山県だけでなく様々な所に拡がればと臨んでいる。

まとめ

舟橋村プロジェクトが伝えたいこと
富山大学地域連携推進機構教授 金岡省吾
  • 舟橋村の子育て支援センターを設立した中心人物(東京から移住したママさん)のエピソードである。東京で暮らしている時の子育て情報収集の場は公園だったそうだ。そこで,舟橋移住時に東京と同じように公園に行ったが、舟橋の公園には誰も居なかったことがきっかけとなり,屋内の公園として子育てサロンを立ち上げた。
  • 子育てサロンがあるからこそ舟橋に住みたいと考える利用者が存在するそうだ。人口減少が課題となり,限られた財政のなかで,屋内の子育てサロンと屋外の公園のどちらが必要であろうか?
  • 公園の緑や景観の機能は確かに必要だが、きれいなだけの公園を整備するのではなく,造園業者による活動によって「公園 の革命」=使い倒しが求められている。造園人は使われる公園を目指さなくてよいのだろうか?
  • 舟橋村長の公園に対するコメントであるが,「公園とは、きれいに整備されているものだと思っていたが、舟橋の造園業者の取組みを見ていて考え方が変わった。公園とは使われる空間なんだと」。
  • 舟橋村のプロジェクトでは,「子育て賃貸住宅があるから」「こども園があるから」「公園があるから」ということを意識した子育て世帯の転入目標が達成できないと「失敗」だと関係者が認識し始めている。
  • 最後に,村職員からのメッセージです。同じような地域課題を抱えた地域は少なくありません。「こんなことができる○○業者なら、うちも力を貸してもらいたい」と考える行政・自治会は必ず出てくるはずです。10年後の生き残りをかけ、必要とされる○○業を目指して下さい。

舟橋村からのメッセージ

舟橋村生活環境課長 吉田昭博
  • 舟橋村の地方創生は,村だけでなく富山県が元気でないと成立しない。富山県を元気にするために舟橋村には、何が出来るかが地方創生だと思っている。造園やハウスメーカーの勉強会を通し,舟橋だけでなく各地域で何か新しい仕事をつくることが、富山県が元気になるための手法であると考えている。
  • 舟橋村のモデルエリアのエリアマネジメント事業を今年度予定しており,サウンディングをおこなっている。造園業の皆様からも仕事づくりとなるよう情報提供を続け,意見を聞きながら進めていくので舟橋村の事業に関心を寄せてもらいたい。